本記事は、インドネシアでの会社設立を検討している方向けに、インドネシアの内資法人(PMDN)を設立する手続き・手順、費用を具体的に解説しています。
内資法人とはインドネシア国内資本のみで設立される法人形態です。
インドネシア人の株主2人を集める必要があるうえ、外国人や外国企業が1株でも出資すると外資法人とみなされます。
多額の資金を準備する必要がなく(資本金100億ルピア〈約9,000万円〉ではなく、5,000万ルピア〈約47万円〉)、かつ外資規制を受けないという大きなメリットもありますが、会社設立後もインドネシア人以外が株主になることはできず、会社の所有者は引き続きインドネシア人となります。
そのため、信頼できる現地パートナーを見つけない限り、非常にリスクの高い手法であることに注意が必要です。
なお、内資法人以外の方法でインドネシアへビジネス進出する手法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
1.インドネシアに内資法人(PMDN)を設立する費用
まずは内資法人設立にかかる費用について解説します。
1-1.内資法人を設立する際に必要な資本金
内資法人を設立する際に必要な資本金は、下表のとおりです。
外資法人に比べて、内資法人は少額の資本金で設立できます。
項目 | 内資法人(PMDN) | 外資法人(PMA) |
---|---|---|
最低払込資本金 | 1,250万ルピア (約12万円) |
100億ルピア (約9,000万円) |
最低投資金額 | 5,000万ルピア (約47万円) |
100億ルピア (約9,000万円) |
外国人の出資 | 不可 | 可 |
インドネシア人は比較的少額の資本金で会社を設立できる一方で、外国人や外国企業がインドネシアに会社を設立する場合には多額の資本金が必要となるため、参入のハードルが高い点が特徴です。
1-2.内資法人設立の費用相場
内資法人を設立する際の費用相場は
20万円〜130万円が一般的です。
すべての手続きを自社で行えば、公証人への依頼など約20万円の実費で済みます。
しかし、インドネシアの複雑な手続きを専門家の助けを借りずに進めるのは難しいのが現実です。
「INDONESIA WORKS」にご相談いただければ、現地で評判の良い「会社設立を得意とするコンサルティング会社」を無料で紹介いたします。
相談料は無料なので、話だけでも聞きたい方はぜひご利用ください。
2.インドネシアで内資法人(PMDN)を設立する手順
インドネシアに内資法人を設立する手順や手続きについて、具体的に解説します。
一般的な内資法人の設立手順は以下のとおりです。
〈STEP1〉設立する会社名を予約する
まず、設立する会社の名称を法務人権省に申請し、予約を行います。
インドネシア語で3つの単語を組み合わせて会社名を決めますが、他社と重複している場合など、使用が認められないケースもあるため、複数の候補を用意しておくことをお勧めします。
法人名の例
- PT.Indofood Sukses Makmur
- PT Matahari Department Store
なお、最初の「PT.」はPerseroan Terbatasの略で、株式会社を意味します。
〈STEP2〉定款の作成する
次に、会社設立に必要な定款を「インドネシア語」で作成します。
定款には事業目的や資本金、株主の情報など下記のような内容が記載されます。
定款の記載内容 例
- 会社名と住所
- 会社の事業目的
- 会社の存続期間
- 授権資本および払込済み資本の金額
- 株式数、株式の種類と種類ごとの株数、株式に付帯する権利および一株の額面価格
- 取締役、監査役の役職および人数
- 株主総会の開催場所と運営方法
- 取締役および監査役の選任、交代および解任に関する手続き
- 利益処分および配当に関する手続き
〈STEP3〉設立公正証書を申請する
定款が完成したら、公証人に依頼して設立公正証書を作成して、申請します。
設立公正証書が法務人権大臣の認可を得ることによって、法人の設立が正当に行われたことを公的に証明されます。
〈STEP4〉所在地証明書を取得する
インドネシアで内資法人を設立する際には、所在地証明書(SKDPまたはSKTU)が必要です。
会社が実際に存在する場所を証明するものであり、登記手続きにおいて重要な役割を果たします。
なお、所在地証明書は会社が入居する「オフィスビルの管理会社」や「所在地区の役所」から取得することができます。
〈STEP5〉 事業基本番号(NIB)を取得する
事業を開始するためには、事業基本番号(NIB)を取得する必要があります。
事業基本番号(NIB)は、企業が合法的に事業を行うために必要な識別番号であり、すべての事業者に取得が義務付けられています。
また、事業基本番号(NIB)は税務署への登録、銀行口座の開設、さらには輸出入業務を行う際にも必要となるため、事業を運営する上で欠かせない重要な手続きです。
事業基本番号(NIB)を取得する手順
事業基本番号(NIB)を取得するにはOSS(法人情報システム)を利用します。
はじめにアカウントを作成する必要があり、以下の手順で手続きを進めます。
手順 | 内容 | |
---|---|---|
1 | OSS(法人情報システム)のアカウントを作成する | OSS(法人情報システム)のウェブサイトで、会社のアカウントを作成します。 |
2 | 事業者データと事業活動計画の入力する | アカウントを作成した後、OSSに自社の事業者データと事業活動計画を登録します |
3 | 取得すべき事業許認可を確認する | 事業基本番号(NIB)が発行される際、事業内容や規模に応じてリスクレベルを判定します。 「低リスク」「低~中リスク」「中~高リスク」「高リスク」の4段階に分けられ、リスクのレベルに応じて取得すべき許認可が変わります。 |
4 | 事業基本番号(NIB)の発行される | OSSから事業基本番号(NIB)が発行されます。 |
〈STEP6〉事業許認可を取得する
事業基本番号(NIB)だけでなく、業種によっては追加の許認可が必要になることがあります。
例えば、商業許可や建設許可などが該当します。
〈STEP7〉会社の納税者番号(NPWP)を取得する
税務署に登録し、「会社の納税者番号(NPWP)」を取得します。
法人税やその他の税金を適切に管理するために必要となるうえ、法人名義の銀行口座を開設する際にも必要となります。
納税者番号(NPWP)は、所在地を管轄する税務署で手続きすることで取得可能です。
〈STEP8〉銀行口座を開設して、資本金を入金する
法人名義の銀行口座を開設し、資本金を入金します。
口座開設には「会社定款」や「会社の納税者番号(NPWP)」が必要なうえ、銀行ごとに求められる書類が異なるため、事前に必要書類を確認しておきましょう。
また、資本金を開設した口座に送金した際には、振込完了の証明として銀行から資本金払込証明書を取得しておくことが重要です。
口座を開設する銀行について
口座を開設する銀行を選ぶ際には、全国的に幅広いサービスを提供している主要な銀行を選ぶことをおすすめします。
国営銀行ではBRIやMandiri、民間銀行ではCIMBやBCAがインドネシアの大手銀行として知られています。
以上が一般的な内資法人設立の手順になります。
ただし、事業分野によってはさまざまな規制が設けられており、展開するビジネスの内容によって必要な手続きや書類が異なる場合があります。
「INDONESIA WORKS」では事業分野や業種に適した情報を提供しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
3.インドネシア内資法人のメリットとデメリット
インドネシア内資法人のメリットとデメリットについて、それぞれ解説します。
3-1.インドネシア内資法人のメリット4つ
内資法人のメリットは、以下のとおりです。
それぞれについて解説します。
〈メリット1〉少額の資本金で設立できる
内資法人は、比較的少額の資本金で設立することができます。
外国企業がインドネシアに現地法人を設立しようとする場合、最低100億ルピア(約9,000万円)の資本金が必要となりますが、インドネシア人による内資法人の場合は最低5,000万ルピア(約50万円)からの資本金で会社設立することが可能です。
初期投資が抑えられるため、個人や中小企業でも設立しやすい点が大きなメリットです。
〈メリット2〉外資規制の対象外になる
インドネシアには外国企業の参入を制限する規制(ポジティブリストおよびネガティブリスト)が存在しますが、内資法人は外国企業を対象とした規制の影響を受けません。
したがって、内資法人ならば外資規制対象の業種(特に農業、小売、運輸、教育など)でも事業を展開することができ、ビジネスチャンスが広がります。
〈メリット3〉設立までの許認可取得が比較的容易である
外資法人の設立に比べ、内資法人は許認可手続きが迅速かつ簡易化されることが多いです。
内資法人の設立は手続き全体にかかる時間が短縮されるので、ビジネスを早く開始することができます。
〈メリット4〉外国人の雇用が可能
内資法人だからといって、従業員のすべてをインドネシア人である必要はありません。
外資法人のように専門的なスキルや知識を持つ外国人を雇用することができるため、事業運営において国際的な人材を活用することができます。
3-2.インドネシア内資法人のデメリット4つ
内資法人のデメリットは、以下のとおりです。
それぞれについて解説します。
〈デメリット1〉外国企業は出資することができない
内資法人は100%インドネシア国民またはインドネシア法人によって所有されている必要があります。
1株でも外国資本が含まれる場合、その企業は外資法人として扱われ、外資規制の対象となります。
したがって、内資法人は株主全員がインドネシア国籍を持つ必要があり、外国人や外国法人は株主として参加できません。
〈デメリット2〉現地パートナーへの依存リスクがある
日本企業が間接的にインドネシアで内資法人を設立する場合、地元パートナーに依存せざるを得ず、さまざまなリスクが伴います。
特に、現地パートナーの透明性や信頼性が十分に確認されていない場合、適切な経営が行われず、トラブルに発展する可能性があります。
また、法律上、外国人は内資法人の株主になれないため、重要な経営判断が現地パートナーに委ねられ、経営に悪影響を及ぼすリスクも懸念されます。
〈デメリット3〉事業規模に関する制約が生じる可能性がある
内資法人は、主に地元市場を対象としたビジネスに適している一方で、大規模な事業展開や国際市場への進出を目指す場合には限界があります。
また、内資法人は法律や規制の制約により、外国企業や多国籍企業との提携が難しい場合があり、事業拡大の障壁となることもあります。
〈デメリット4〉外国人を雇用する場合は条件がある
内資法人であっても外国人を雇用することは可能ですが、条件が定められています。
通常、外国人1人を雇用する場合、最低でも3人のインドネシア人を雇用する義務があり、この比率を守らなければなりません。
4.「ノミニー(名義貸し)」について
外国企業が内資法人を設立する手段として、「ノミニー(名義貸し)」を利用する方法があります。
ノミニーとは
外国人や外国企業がインドネシア人の名義を借りて、表向きはインドネシア人が経営する「内資法人」として設立しながら、実際の所有権や経営権を外国人や外国企業が保有する手法を指します。
ノミニーを利用すれば、外国企業であってもインドネシアの外資規制を回避して内資法人を経営することが可能です。
しかし、インドネシアではノミニーの利用は違法とされているため、十分な注意が必要です。
4-1.ノミニーで内資法人を設立するリスク
明確に禁止されているノミニーによる内資法人設立は、以下のようなリスクを伴います。
ノミニーを利用するリスク
- 法人が法的に認められない
- 紛争時に法的対応が困難になる
- 名義者に乗っ取られる危険性がある
- 税務および財務リスクがある
- 企業イメージが悪化する
- 規制強化によっては摘発される
どのリスクも発生した場合、法的に解決することは非常に困難です。
そのため、ノミニーの利用を検討する際は、上記リスクを十分に理解した上で慎重に判断することが求められます。
判断がつかない場合は、迷わず専門家に相談しましょう。
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