インドネシアでの通関・税関(輸出入)手続きのやり方について|手順や必要書類一覧、関税やトラブル事例も解説

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本記事では、インドネシアの通関(輸出入)手続きについて具体的な手順を解説します。

目次

1.インドネシアの通関(輸出入)手続きについて

インドネシアの通関手続きついて、輸入・輸出それぞれについて解説します。

1-1.通関手続きの概要

まず前提として、インドネシア国内の日系企業が輸入業務を行うには、「輸入業者認証番号(API)」として有効な事業基本番号(NIB)を取得しておく必要があります。

事業基本番号(NIB)とは1社につき1つ付与される番号で、「輸入業者認証番号(API)」や会社登録証(TDP)なども兼ねています。

〈図 事業基本番号(NIB)と輸入業者認証番号(API)について〉

「輸入業者認証番号(API)」には、「API-P(製造業者向け)」や「API-U(非製造業者向け)」といった業種ごとに異なる種類があります。

また、事業基本番号(NIB)も取得している番号によって輸入制限がかかります。
基本的に事業基本番号(NIB)に対応する品目が輸入可能となるため、例えば飲食業の事業基本番号(NIB)を取得した事業者は食材を輸入できますが、製造業の原材料を輸入することは難しいです。

1-1-1.輸出入を依頼する輸送業者について

インドネシアを含む海外への輸送には、主に「クーリエ」と「フォワーダー」の2種類の輸送業者に依頼します。
クーリエは集荷から納品までを自ら行う国際宅配業者、フォワーダーは目的に合った最適な輸送ルートを手配する国際輸送業者です。

<クーリエとフォワダーの比較>

クーリエ フォワーダー
主な業者 UPS、DHL、TNT、FedEx等 日本通運、日立物流、近鉄エクスプレス、ジャパントラスト、郵船ロジスティクス 等
輸送手段 主に航空便 様々な輸送手段を組み合わせて手配する
対応エリア 営業所がある地域 世界各地
通関手続き 通関手続きや書類作成を代行してもらえる 通関手続きや書類作成を自社で行う
(代行依頼できる場合もある)

1-2.輸入通関の流れ

インドネシアの「輸入」通関手続きは、主に以下の流れで進みます。

〈図 輸入通関の流れ〉

〈輸入通関の流れ〉

1. 入港予定書を提出する(輸送会社)
2.荷卸し・一時保管してもらう(輸送会社)
3.輸入申告書等を提出する
4.輸入関税等を納付する
5.税関の申請・検査を受ける
6.許可を受けて搬出する

【輸入流れ①】輸送会社が入港予定書を提出する

輸送業者が貨物をインドネシアに運び込むにあたり、オンラインシステムで「入港予定届」を税関事務所に提出しなければなりません。

また、「輸入積荷目録」の提出も義務化されており、入港予定届の登録番号を取得後に荷卸しを行う輸送業者が提出します。

【輸入流れ②】荷卸し・一時保管してもらう

税関長の許可を得たら、荷卸しを行います。
輸入した貨物は通関審査が終わるまで、港の一時蔵置場(TPS)に最大30日間保管されます。
もし港での保管が難しい貨物の場合には、税関側の許可を得て港外の保税蔵置場(TPB)に最大60日間保管してもらうことも可能です。

【輸入流れ③】輸入申告書等を提出する

輸入申告書はINSWシステムを通じて電子データで提出します。
その他にも輸入申告に必要な書類を荷降ろし地の税関宛に提出し、申告書登録番号を受け取ります。

<輸入申告に必要な書類一覧>

必要書類 取得者(作成者) 取得方法(作成方法)
輸入申告書(PIB) 輸入事業者 税関システム「INSW」を介して申請する。申請前にアカウントの作成が必要。
輸入業者認定番号(API)として有効な事業基本番号(NIB) 輸入事業者 法人情報システム「OSS」から取得する
所管省庁による輸入承認書等(輸入規制品目の場合) 輸入事業者 関連省庁からの輸入するための推薦状の発行申請等を行う。
輸入関税納付書(SSP) 輸入事業者 税関システム「INSW」を介して申請する。
インボイス(仕入書) 輸出事業者 送り元の輸出事業者が作成する。
パッキングリスト(包装明細書) 輸出事業者 送り元の輸出事業者が作成する。
船荷証券または航空貨物運送状 輸出事業者/配送業者 主に配送業者が作成する。
その他(原産地証明書等) 輸出事業者等 輸出事業者が作成または商工会議所、官庁などが発行する。

【輸入流れ④】輸入関税等を納付する

輸入申告書を税関へ提出した後、輸入者は輸入関税等の支払いのためのビリングコードを受け取ります。

ビリングコードを受領後、集金代行機関(指定銀行または郵便局)で輸入関税や付加価値税(PPn)、所得税(PPh22)を納付してください。

【輸入流れ⑤】税関の審査・検査を受ける

税関職員によって輸入した貨物が規制品目に該当するかどうかを確認したのち、輸入する物品と輸入事業者を基に以下の3つの通関レーンに分類され、審査および検査が行われます。

〈通関レーンの違い〉

通関レーン 書類審査 現物検査
レッドレーン 実施 実施
イエローレーン 実施 省略される場合もある
グリーンレーン 実施 なし


「グリーン→イエロー→レッド」の順に審査や検査が厳しくなるため、どのレーンに分類されるかによって輸入許可が下りるまでのリードタイムが異なる点に注意しましょう。

【輸入流れ⑥】許可を受けて搬出する

税関からの承認が下りると輸入許可書が発行され、輸入貨物を税関領域から引取ることができます。

参考: JETRO|輸出入手続
参考: JETRO|インドネシアの通関問題(PDF)

1-3.輸出通関の流れ

〈図 輸出通関の流れ〉

〈輸出通関の流れ〉

1. 輸出関税を納付する
2.輸出申告書を提出する
3.税関の審査・検査を受ける
4.搬入して荷積みを行う

【輸出流れ①】輸出関税を納付する

天然資源や農産物等を輸出する場合、輸出関税を納付します。

【輸出流れ②】輸出申告書を提出する

輸出申告書並びに必要書類を船積み地の税関宛にオンラインで提出します。

<輸出申告に必要な書類一覧>

必要書類 取得者 取得方法
輸出申告書(PEB) 輸出事業者 税関システム「INSW」を介して申請する。申請前にアカウントの作成が必要。
事業基本番号(NIB) 輸出事業者 法人情報システム「OSS」から取得する
所管省庁による輸出承認書等(輸出規制品目の場合) 輸出事業者 関連省庁からの輸出するための推薦状の発行申請等を行う
輸出関税納付書(輸出関税が課税されている品目の場合) 輸出事業者 法人情報システム「OSS」から取得する
インボイス(仕入書) 輸出事業者 送り元の輸出事業者が作成する。
パッキングリスト(包装明細書) 輸出事業者 送り元の輸出事業者が作成する。
船荷証券または航空貨物運送状 輸出事業者 主に配送業者が作成する。
その他(原産地証明書等) 輸出事業者 輸出事業者が作成または商工会議所、官庁などが発行する。

輸出予定日の7日前から税関地区への搬入前までに提出して、申告書登録番号を受け取ります。

【輸出流れ③】税関の審査・検査を受ける

提出した書類を基に申告内容や輸出関税の計算等の審査を受けます。
また、再輸入予定の輸出品や輸出関税が課される輸出品、その他疑わしい輸出品などを対象に現物検査もあわせて行われます。

【輸出流れ④】搬入して荷積みを行う

税関からの承認が出た後、輸出品を税関地区に搬入して荷積みを行います。

参考: JETRO|輸出入手続
参考: JETRO|インドネシアの通関問題(PDF)

2.インドネシアで輸出入が禁止・制限されている品目 一覧

輸出入に関しては国際条約や各国の法令等によって規制されており、インドネシアにおいて輸出入が禁止または制限されている品目を紹介します。

2-1.インドネシアへの輸入が禁止・制限されている品目

インドネシアへの輸入が「禁止」または「制限」されている品目を紹介します。

2-1-1.輸入が禁止されている品目

インドネシアへの輸入が禁止されている品目は、以下のとおりです。
危険物質や特定の品目等が指定されているほか、すべての品目で中古品を輸入することはできません。
インドネシアで輸入できるのは未使用の新品である必要があります。

<輸入が禁止されている品目>

種類 主な品目
食品分野 砂糖/イタリアからのモッツァレラチーズ/特定の魚/医薬品と食品の特定の原料
農業分野 農具・農園用具
工業分野 特定の冷蔵システム(室温調整器、冷蔵・冷凍庫、コンテナ等)/水銀を含有する医療機器
その他 あらゆる中古品/オゾン層破壊物質/有毒危険物質/有毒危険廃棄物と特定の非有毒危険廃棄物

参考:JETRO|インドネシア 貿易管理制度 「輸入品目規制」詳細

2-1-2.輸入が制限されている品目

インドネシアへの輸入が制限されている主な品目は、以下のとおりです。
制限品目を輸入するには特別な条件や許認可、検査が必要となり、許可を得たとしても「輸入個数」や「輸入港」などが限定されます。

また宗教上の理由で輸入が制限されている品目もあり、輸入するには法律に則ったハラル認証を受ける必要があります。

<輸入が制限されている品目>

種類 主な品目
食品・飲料・医薬品等 米/トウモロコシ/砂糖/にんにく/作物製品/塩/水産物/アルコール飲料/アルコール飲料の原材料/牛肉類と加工品/家禽とその生肉、内臓、および加工品/伝統生薬とサプリメント/化粧品/家庭用救急用品/医薬品・化粧品関連
化学製品・危険物・地下資源等 スチール精錬産業用再生原材料/プラスチック原材料/セメントとクリンカー/セラミック/潤滑油/サッカリン・チクロ・アルコール含有香料/石油ガスとその他燃料/商業産業向け爆発原料/危険原料/特定の化学物質/危険有毒原料/植物のタバコ/農薬原料/未加工ダイヤモンド
工業製品等 カラー多機能機・カラーコピー機・カラープリンター/携帯電話・携帯コンピュータ・タブレット端末/玩具/電気製品/計測機器/タイヤ/ガラスシート/バルブ/二・三輪自転車
繊維製品等 かばん/衣料品/繊維と繊維製品/バティックの繊維・繊維製品/履物/既製繊維製品

参考: JETRO|インドネシア 貿易管理制度 「輸入品目規制」詳細
参考:一般社団法人ハラル・ジャパン協会|インドネシアのハラル認証「BPJPH」
参考:農林水産省|ハラール及びコーシャに関する情報

2-2.インドネシアからの輸出が禁止・制限されている品目

インドネシアからの輸出が「禁止」または「制限」されている品目を紹介します。

2-2-1.輸出が禁止されている品目

インドネシアからの輸出が禁止されている品目は、以下のとおりです。
木材や鉱物などの天然資源を中心に輸出が禁止されています。

<輸出が禁止されている品目>

種類 主な品目
農業分野 天然ゴム類/イモ類/米
林業分野 ロタン類/木材/枕木/木製建材/木製品/木製プレハブ建材/厚さ6ミリ超のスライス木材
鉱業分野 ラテライト鉄精鉱/銅精鉱/鉛精鉱/亜鉛精鉱/スズ/宝石などの鉱業製品
その他 文化財/金属スクラップ/特定の魚とエビ

2-2-2.輸出が制限されている品目

インドネシアからの輸出が制限されている主な品目は、以下のとおりです。
制限品目を輸出するには「登録輸送業者としての登録」や「省庁からの推薦状」、「商品収支の申告」など、品目ごとに細かい要件が設定されています。

<輸出が制限されている品目>

種類 主な品目
食品分野 コメ/家畜と家畜製品/燕巣
農業分野 野生の動植物と魚/水産物/コーヒー/インドネシア規格外のゴム
林業分野 ロタンや木材などの林業製品
鉱業分野 石油ガス/その他の燃料/石炭と石炭製品/未加工ダイヤモンド/スズ製品/精錬加工した鉱業製品/研究開発用・再輸出用・工業製品輸出用の鉱業製品
その他 金属スクラップ/政府補助なしの尿素肥料

参考:JETRO|インドネシア 貿易管理制度 「輸出品目規制」詳細

3.インドネシアの関税体系

インドネシアの関税制度は財務省(Kementerian Keuangan)が管轄しており、関税総局(Direktorat Jenderal Bea dan Cukai)が担当しています。

3-1.インドネシアの関税の概要

インドネシアの関税率は主に以下の協定や制度によって決定されており、輸出入される品目や相手国、協定に応じて税率が異なります。

  • 一般税率(輸入関税・輸出関税)
  • ASEAN共通効果特恵関税(CEPT)の税率
  • 自由貿易協定(FTA)の適用税率
  • 一般特恵関税制度(GSP)の税率
  • 世界的貿易特恵関税制度(GSTP)の税率

3-2.インドネシアの輸入関税

輸入関税の基本税率は以下のように定められており、国内産業を保護するために輸入品には高い税率が適用される傾向があります。

<インドネシアにおける輸入関税の基本税率>

種類 税率
最必需品 0~10%
必需品 10~40%
一般品 50~70%
贅沢品 最大200%

また、輸入品に対してどの関税が適用されるかは非常にあいまいで、明確な基準がありません。
当局との交渉が必要になるケースが多くなるため、経験のある税理士の力を借りた方が円滑に交渉を進めることができるでしょう。

3-3.インドネシアの輸出関税

天然資源や農産物等には輸出抑制や価格の安定化を目的として、輸出関税が課せられています。
主な課税対象はパーム製品や皮革、木材、カカオ豆、および鉱物製品です。

<インドネシアにおける輸出関税の基本税率>

種類 税率
パーム製品24品目 参考価格と品目に応じて、0~431ドル/重量トン
皮革 15%または25%(品目によって異なる)
木材 2%・5%・10%・15%(品目によって異なる)
カカオ豆 0%・5%・10%・15%(参考価格によって異なる)
鉱物製品 〈銅、鉄、鉛、亜鉛の精鉱4品目〉
5%・7.5%・10%・15%(精錬設備の開発段階によって異なる)
〈ニッケルとボーキサイト〉
10%

参考:JETRO|関税制度

3-4.インドネシアの関税率を調べる方法

インドネシアの関税率を調べる方法は、主に2つの方法があります。

〈インドネシアの関税率を調べる方法〉

  • 世界貿易機構や世界税関機構などが開発した無料ツール
  • インドネシアのINSW(国家システム)のWebサイト

ただし、あくまで簡易検索ツールのため、目安として利用した方がよいでしょう。

また、関税率を調べる際に必要となる世界共通の品目番号(HSコード)は、以下のサイトで確認できます。

参考: 公益財団法人日本関税協会|Web輸出統計品目表

参考:Indonesia National Trade Repository

3-4-1.世界貿易機関等が合同開発した無料ツールで調べる

引用:RULES OF ORIGIN FACILITATOR

世界貿易機構(WTO)と世界税関機構(WTO)、国際貿易センター(ITC)の3つの機構が合同で開発したツール「RULES OF ORIGIN FACILITATOR」で、関税を調べることが可能です。

輸出国と輸入国、HSコードを入力すると、関税率の目安を確認できます。

3-4-2.インドネシアのINSW(国家システム)のWebサイトで調べる

引用:Indonesia National Trade Repository

「Indonesia National Trade Repository」にアクセスし、HSコードで検索すると、関税率の目安を確認することができます。
HSコードはわからない場合は品目で検索するとHSコードの候補が複数表示されるので、候補の中から該当する品目を探しましょう。

参考:JETRO|インドネシアの関税率と輸入規制の検索方法

4.インドネシアの通関(輸出入)トラブルでよくある事例 一覧

インドネシアでの通関における、よくあるトラブル事例を紹介します。

<通関のよくあるトラブル事例>

トラブル事例 内容
日本のHSコードを利用したら、インドネシアと解釈が異なり、追徴課税が発生した 同じ品物でも、日本のHSコードとインドネシアでのHSコードが違い、通関で認められず、追徴課税を課せられることがあります。
利用できていたHSコードが事後調査で指摘を受け、高額の追徴課税が生じた 定期的にインドネシアに商品を輸入していた際に問題なく利用できていたHSコードが、突然「不可」になるようなケースがあります。
ライセンス回避のため実態と異なるHSコードを使用していたが、違いを指摘されて過去数年分の追徴金を支払った ライセンス(輸入許可)が必要な品目に、回避の為異なるHSコードを使用するような不正を行うと、発覚時には過去数年分の追徴金を支払うこととなります。
関税の還付手続きを行ったら、別件で罰金を課せられた インドネシアでは払いすぎた関税の還付がほとんど成功しません
むしろ、還付金申請を行うと税務監査が入って会社を徹底的に調査されることが多く、関税とは関係のない税法違反で追徴金を徴収される例もあります。
必要なライセンスを取得しておらず、通関が通らなかった 通常必要なライセンス(API-P等)だけでは通関しない輸入品目である事に気づかず、別途必要なライセンスを取得しておらず、通関が通らなかった。
新品を中古品として判断され、通関で止まった インドネシアでは中古品の輸入は原則禁止されており、新品でも中古品と誤認されてしまうと輸入が認められません。
「電子原産地証明書(e-CO)」がインドネシア税関に届かなかった システムの不具合等により、日本から送信された「電子原産地証明書(e-CO)」がインドネシア通関で受信されない場合があります。
関税の特恵待遇が認められなかった 日本とインドネシアの経済協定があるにもかかわらず、日本から第三国を経由してインドネシアに輸入すると、関税上の特恵待遇を受けられないケースがあります。

下記記事ではインドネシアでの通関トラブルについて、トラブル事例と対策を詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

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