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【雇用・給与編】インドネシアの人事・労務に関するトラブル事例集|よくあるトラブル事例とその対応策を解説

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本記事ではインドネシアの人事・労務に関する「よくあるトラブル事例」のうち、「雇用・給与」に関するものを紹介します。

<インドネシアでよくある人事労務系のトラブル>

  • 「雇用」に関するトラブル事例
  • 「給与」に関するトラブル事例
  • 「BPJS(社会保障保険)・JHT(積立年金)」に関するトラブル事例

また、日本とインドネシアの「労務関連法規の違い」を把握したい方は、下記記事をご覧ください。

1.「雇用」に関するトラブル事例

まずは「雇用」に関するトラブルの事例を紹介します。

<雇用に関するトラブルの事例 一覧>

トラブル事例 内容
1 採用オファーを出したが連絡が途絶えた 採用のオファーレターを送付したからといって、必ずしも採用できるわけではありません。
採用予定者が連絡を絶ってしまうケースがあります。
2 従業員が会社の機密情報を外部に漏洩させてしまう 従業員は何が機密情報にあたるかを理解していないことが多く、会社の機密情報が競合他社に漏洩してしまうケースがあります。
3 社内規定がないために罰則を適用できない 従業員が問題を起こした場合であっても、就業規則を策定していないと、適切な処分ができないことがあります。
4 就業規則や労働法に関して交渉された 就業規則や労働法で明確に定まっている事象について従業員からの交渉が発生することがあります。

それぞれについて解説します。

1-1. 「採用オファーを出したが、連絡が途絶えた」事例

トラブル内容

面接後に採用しようとオファーレターを送付したら、採用予定者と連絡がつかなくなった。

インドネシアに限ったことではありませんが、採用決定後に採用予定者と連絡がつかなくなる場合があります。

対応策

インドネシア人は働く気がなくても条件のよい求人があれば、とりあえず応募する傾向があります。
そのため、面接時から採用決定までにコミュニケーションを強化して、意思確認を徹底することが重要です。

また、採用プロセスにおいて「求職者の信頼性を評価する仕組みを導入する」、「不履行時の規定を事前に伝えて同意を求める」など、採用決定後に連絡が途絶えないようにする対策が必要になります。

さらに採用予定者と連絡が途絶えた場合に備えて、次点の採用予定者を用意しておくとよいでしょう。

1-2.「従業員が会社の機密情報を外部に漏洩させてしまった」事例

トラブル内容

従業員が会社の機密情報を漏洩させてしまい、競合他社に機密情報が流出してしまった。

雇用契約を締結している従業員であっても、会社の機密情報を漏洩させてしまい、競合他社に機密情報が流出してしまうケースがあります。
また、そもそも何が機密情報にあたるかを理解していないケースが多いです。

対応策

機密情報の漏洩を防止するためには、まず全従業員に対して機密保持契約を締結させることです。
機密保持契約に反して機密情報を漏洩させてしまい、会社に損害を与えた場合には賠償金を支払うことを明記しておけば、一定の抑止効果があるでしょう。

機密情報に対しての知識が乏しいケースも多いため、定期的に情報セキュリティ教育を実施し、機密情報へアクセスできる権限を必要最低限の人に制限することも大切です。

また万が一、情報漏洩が発生した場合に備えて対応マニュアルを策定し、迅速に対処できるように準備しておくことをおすすめします。

1-3. 「社内規定がないために罰則が適用できない」事例

トラブル内容

従業員に対するペナルティを科そうとしたが、社内規定が存在せず適切な処分ができない

従業員が問題を起こした場合、労働法上適法であっても就業規則を策定していないと、適切な処分ができないことがあります。

対応策

まずは就業規則として社内規定を策定し、規定違反した場合の罰則を明確にすることが大切です。
雇用契約時に、全従業員に対して社内規定や罰則を周知し、同意を得ておきましょう。

ただし、日本とインドネシアでは労働文化が異なるため、日本と同じ労働管理を行うことはできません。
業種に応じた過去の事例をもとに、インドネシアの労働文化に適した就業規則のフォーマットを使って作成しましょう。

インドネシアの労働文化は複雑なため、外部のコンサルタントから事例提供を受けるか、専門家に従業規則の作成を依頼することをおすすめします。

1-4.「就業規則や労働法に関して交渉された」事例

トラブル内容

就業規則や労働法で明確に定まっている事象について、従業員からの交渉が発生した。

インドネシアでは法律が頻繁に改正されるため、以前の法律と矛盾が生じる内容があったり、詳細が未定であったりして混乱が生じやすいです。

そのため、就業規則や労働法などで明確に定まっている事象についても従業員からの交渉が発生するケースがあります。

対応策

〈事前対策〉
就業規則や労働法を従業員に周知した後でも法律が改正されることが多々あるため、定期的な研修の実施をおすすめします。
新しい法律の施行に対応するために、外部から定期的にレクチャーを受けるとよいでしょう。

また、従業員から交渉が発生した場合に備え、労働法に精通した法務担当者を社内に配置して「迅速に対応できる体制」を整えておくことも大切です。

〈事後対応〉
交渉が発生した場合には感情的にはならず、法的な基準に基づいて適切に対応しなければなりません。

インドネシアで「評判の良い」法律事務所を、下記で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

2.「給与」に関するトラブル事例

「給与」に関するトラブルの事例を紹介します。

<「給与」に関するトラブルの事例 一覧>
トラブル事例 内容
1 最低賃金を満たしていなかった 最低賃金を満たさない給与で従業員を雇用していたことが発覚した。
2 適切な給与テーブルが設定できていない 業種や職種に応じた適切な給与テーブルが設定されていないと、人材確保が難しくなります。

それぞれについて解説します。

2-1. 「最低賃金を満たしていなかった」事例

トラブル内容

最低賃金に満たない賃金で従業員を雇用していたことが発覚した。

最低賃金に関する違反に対しては、インドネシアの労働法185条によって、1年以上4年以下の禁固刑と、1億ルピア以上4億ルピア以下の罰金刑の両方またはいずれか一方の刑事罰が科されます。

参考: 厚生労働省|インドネシア 労働法

対応策

インドネシアでは「月給」で最低賃金が定められており、州ごと(特定の地域では県・市ごと)に毎年決定されます。

経済発展中のインドネシアの最低賃金は年々上昇しており、最低賃金で雇用していても翌年には賃金を引き上げないと最低賃金を満たさなくなる可能性があります。
そのため最低賃金の動向を注視し、定期的に賃金を見直して労働法に基づいた最低賃金を遵守しましょう。

また、最低賃金に関する改正だけでなく、労働法全般に関する知識を従業員に周知し、コンプライアンスを徹底することも重要です。

2-2. 「適切な給与テーブルが設定できていない」事例

トラブル内容

業種や職種に応じた適切な給与テーブルが設定できていないため、人材獲得が困難になっている。

インドネシア人は日本人と違って、給与を教え合って他人と比べる傾向にあります。

業種や職種、役職などに応じた給与でないとわかった場合は、すぐに転職することも少なくありません。
適切な給与テーブルが設定できていない場合は、優秀な人材の確保が難しくなります。

対応策

業種や職種ごとの給与に関する市場調査を行い、適正な給与テーブルを策定することが重要です。
自社での市場調査が難しい場合は、外部のコンサルタントから事例提供を受けるか、専門家に調査を依頼することをおすすめします。

また、従業員に対して給与体系の説明を行い、透明性を確保することも優秀な人材を流出させない一つの手段です。

さらに社内で人事システムを導入し、給与テーブルを管理・運用しやすくすることも検討しましょう。

3.「BPJS(社会保障保険)・JHT(積立年金)」に関するトラブル事例

「BPJS(社会保障保険)・JHT(積立年金)」に関するトラブルの事例を紹介します。

<「BPJS(社会保障保険)・JHT(積立年金)」に関するトラブル事例 一覧>
トラブル事例 内容
1 BPJS(社会保障保険)に未加入だった 従業員をBPJS(社会保障保険)に加入させていない企業には罰金が科せられます。
2 BPJS(社会保障保険)やJHT(積立年金)の取り扱いに関するトラブルが発生した 法律の改正が行われても国民に十分な周知が行われず、会社側と従業員側の認識の相違からトラブルになるケースがあります。

それぞれについて解説します。

3-1. 「従業員がBPJS(社会保障保険)に未加入だった」事例

トラブル内容

雇用契約を締結している従業員がBPJS(社会保障保険)に未加入であることが判明した。

「BPJS」とは「Badan Penyelenggara Jaminan Sosial」の略称で、インドネシアの医療・社会保障制度の総称です。
従業員をBPJS(社会保障保険)に加入させていない企業には罰金が科せられます。

対応策

労働者社会保障制度は2015年7月1日から開始されましたが、制度の準備や国民への周知不足のまま実施されています。

そのため、まずは法律に従って対象になる全従業員をBPJSに加入させ、会社が保険料の一部を負担しなければなりません。
社内で正確な情報提供を行ったり、BPJS(社会保障保険)への加入手続きがスムーズに進めたりするために専門の部署を設置した方がよいでしょう。

また定期的に従業員のBPJS加入状況を確認し、未加入者がいないかチェックすることもおすすめします。

なお、労働者社会保障制度は6か月以上就業する外国人にも加入義務があるため注意が必要です。

参考: 厚生労働省|東南アジア地域にみる厚生労働施策の概要と最近の動向(インドネシア)

3-2.「BPJS(社会保障保険)やJHT(積立年金)の取り扱いに関するトラブルが発生した」事例

トラブル内容

BPJS(社会保障保険)やJHT(積立年金)の取り扱いに関して、従業員からの不満が噴出した。

BPJS(社会保障保険)やJHT(積立年金)など従業員の生活に直結することは、不満が溜まりやすいです。
インドネシアでは労働者社会保障制度における法律が改正されても、国民に十分な周知が行われず、会社側と従業員側の認識の相違からトラブルになるケースがあります。

対応策

〈事前対策〉
まずは、BPJS(社会保障保険)やJHT(積立年金)に関する制度を従業員に説明し理解を促すことが大切です。

「法律に準拠している部分」と「社内規定で制定している部分」を明確にし、法律が改正された場合も変更点をしっかりと従業員に理解させましょう。
法改正の正確な情報提供と適切な手続きができていれば、従業員の不満を軽減できます。

また、BPJS(社会保障保険)やJHT(積立年金)に関する制度に対しての従業員からの問い合わせや相談に迅速に対応するために、専門の窓口を設けることをおすすめします。

〈事後対応〉
最終的にトラブルになってしまう場合は、外部のコンサルタントからアドバイスをもらいながら、法的根拠に基づいて対処することが重要です。



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