インドネシアワークス TOP 「インドネシア進出の基礎知識」に関する記事一覧 【2024年版】「インドネシア進出」の基礎知識 日本企業がインドネシアに進出して成功した事例 一覧|成功した理由と成果

日本企業がインドネシアに進出して成功した事例 一覧|成功した理由と成果

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インドネシア進出に成功している日本企業は数多く存在します。
本記事では、インドネシア進出時によく遭遇する課題や解決策に焦点をあて、インドネシア進出に成功した企業をピックアップして紹介します。

<成功事例>
企業名 成功事例
ヤクルト 1日の平均の販売本数は700万本を超え、日本の次に大きな市場に成長
大塚製薬 ポカリスエットが1年で6億本以上販売される国民的なドリンクにまで認知度アップ
ユニ・チャーム 「ベビー用紙おむつ」「生理用品」「大人用排泄ケア用品」のインドネシア市場で、いずれもシェアNo.1
ピジョン インドネシアで哺乳器のシェアが6割。シンガポール・タイ・ベトナムでもトップシェアを獲得
丸亀製麺 2013年に進出したから、たった10年で100店鋪を達成

業界別のインドネシア進出の失敗・撤退した事例は下記記事で詳しく解説しています。

また、インドネシアへ進出するための基礎知識や具体的な始め方、重要なマクロデータについては、下記記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

目次

1. ヤクルトの成功事例 「1日の平均販売本数は732万本」

引用:https://yakult.co.id/

既存の販売・流通網に頼らない独自の販売・流通手法(いわゆるヤクルトレディ)を地道に構築し続けた結果、インドネシアは日本に次いで世界で2番目にヤクルト製品の消費量が多い国となりました。

<ヤクルトの成功事例>
項目 内容
成果 初年度は1日あたり7万本の販売から、30年間で100倍の700万本以上を販売!
現地法人名 PT.Yakult Indonesia Persada
業種・事業内容 食品メーカー〈BtoCタイプ〉
ヤクルトの製造・販売
現地公式サイト https://yakult.co.id/
主要な出来事
  • 1990年、会社設立して翌年に営業開始
  • 1991年、7万本/1日を販売
  • 2005年、100万本/1日を販売
  • 2011年、200万本/1日を販売
  • 2021年、700万本/1日を販売
進出の目的・背景
  • 衛生環境が悪く、予防医学が必要な新興国市場を開拓したい
主な課題
  • ヤクルトの「乳酸菌 シロタ株」の効果効能を理解してもらいたい
解決手法・
成功した理由
  • ヤクルトレディによる訪問販売
  • 小売店には卸売業者を使わず直接納品
  • 優秀な現地人材の確保

1-1.インドネシア進出の目的・背景

高度経済成長期~バブル期の日本企業の海外進出と言えば欧米市場で、進出してはみたものの、既に競合の現地メーカーが強固なブランド力や流通ネットワークを通じて市場を支配し、その壁にぶつかって悪戦苦闘する例が数多くありました。

一方で、アジアや中南米は社会不安やインフラの課題からビジネス基盤が整っていないと判断されがちでしたが、現地企業が確たる市場支配を確立していないマーケットが数多く存在しており、ヤクルトはかなり早い段階からそこに新たなビジネスチャンスを見出して積極的に新興国市場の開拓に乗り出しました。

ヤクルトの海外進出は、1964年に台湾で初めて海外事業所を開設することから始まります。
以降、「衛生環境の悪い、予防医学の必要性が高い発展途上国」をターゲットに、ブラジルや香港、タイ、韓国、フィリピン、シンガポール、メキシコなどの新興国に次々と進出していきます。

1-2.主な課題と解決手法・成功した理由

ヤクルトがインドネシア進出を成功した理由としては、以下の3つが挙げられます。

  • ヤクルト独自の訪問販売|ヤクルトレディ
  • 小売店には卸売業者を使わず直接納品
  • 優秀な現地人材の確保

それぞれについて解説します。

1-2-1.ヤクルト独自の訪問販売|ヤクルトレディ

日本で成功体験を積み重ねてきた「ヤクルトレディ」のシステムは、インドネシア市場でも成功を支える重要な要素となっています。

現地のヤクルトレディが定期的に訪問して「ヤクルトが健康に良い影響を与える」点を直接説明しながら販売する宅配事業方式は、顧客との信頼を築く手段として非常に有効であり、ヤクルトレディの人数と販売量が正比例で伸びるという相関値を示しています。
(ヤクルトレディの人数は2011年の3,840人から2022年には11,000人へと大幅に増加)

さらに、ヤクルトレディから商品の説明を受け購入経験がある顧客は、スーパーマーケットなどでもヤクルトを購入する傾向にあり、ヤクルトレディによる直接販売は、他の販売チャネルに対しても相乗効果を生んでいます。

1-2-2.小売店には卸売業者を使わず直接納品

通常、飲食品や日用品は卸売業者を介して小売店に納入されることが一般的ですが、インドネシアヤクルトは全ての取引店舗に対して社員が直接訪問して商品を納品する体制をとっています。

手間と労力を要しますが、社員が直接取引店を訪れることによって、店主に商品知識を伝え、関係を深める機会を持つことができます。

スーパーマーケットなどの小売店だけでなく、「ワルン」と呼ばれる伝統的な売店にも直納しており、店舗販売におけるワルンの占める割合は6割を超えます。

1-2-3.優秀な現地人材の確保

海外進出していると予期せぬ外的要因によって苦境に立たされることがあり、その時の対応が将来の成功を左右することがあります。

例えば、インドネシアヤクルトは1997年から始まったアジア通貨危機により売上が大幅に減少し、経営状況が悪化しました。
経営状況が悪化した際の打開策として現地人材をリストラせず、代わりに日本人駐在員の数を調整して危機を乗り越えた結果、現地人材の会社へのロイヤリティが高まったとされています。

特にインドネシアでは1つの会社に長く留まることが少なく、欧米と同様に転職が活発です。
そのため、優秀な現地人材を確保していくことは持続可能な成長を遂げるための鍵となります。

1-3.成果

ヤクルトが1991年にインドネシア市場に参入した際、初年度の販売数は1日あたり7万本でした。
しかし、インドネシアでの30年にわたる営業努力の結果、2021年には1日あたりの販売本数が100倍に増加し、700万本以上を達成。
インドネシアは日本に次いで、世界で2番目に多くヤクルト製品が消費されている国となっています。

<1日あたりのヤクルト製品の売上本数>

  • 1位:日本(約978万本)
  • 2位:インドネシア(約732万本)
  • 3位:中国(約698万本)
  • 4位:メキシコ(約343万本)
  • 5位:ブラジル(約138万本)

参考: 株式会社ヤクルト本社|2022年3月期 決算説明
参考:
JETRO|巨大市場インドネシアに挑む日本企業(2)


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2.大塚製薬の成功事例 「知名度ゼロから国民的ドリンクまでに成長」

引用:https://www.aio.co.id/

大塚製薬のポカリスエットは販売開始時にはほとんど受け入れられなかったものの、現在ではインドネシアで知らない人がいないほど、国民的なドリンクとして広く愛されています。
インドネシアで大きな成功を収めた大塚製薬のポカリスエット事業の進出事例を紹介します。

<大塚製薬の成功事例>
項目 内容
成果 ポカリスエットが初年度の3万缶から、年間6億本以上に販売増加!
現地法人名 PT. Amerta Indah Otsuka
業種・事業内容 食品メーカー〈BtoCタイプ〉
飲料(ポカリスエット・オロナミンC等)、栄養補助食品(SOYJOY)の製造・販売 等
現地公式サイト https://www.aio.co.id/
主要な出来事
  • 1997年、会社設立(大塚製薬とPT.Kapal Apiとの合弁会社PT Kapal Indah Otsuka)
  • 2006年、ポカリスエットのペットボトル(500ml)を販売開始
  • 2018年、ハラル対応の製造ラインでSOYJOYの製造を開始
進出の目的・背景
  • 大塚製薬の独自戦略として、欧米よりもアジア進出を重視。
主な課題
  • インドネシア市場に「スポートドリンク」というジャンルがない中で、知名度ゼロからのスタート
解決手法・
成功した理由
  • 段階を踏んで事業を拡大
  • 日本とは異なる販売戦略
  • 積極的なSNSマーケティング

2-1.インドネシア進出の目的・背景

大塚製薬はアジア地域に焦点を当てて海外進出するという独自の戦略を持っており、その背景の中で当然、アジアの大国インドネシアにも進出する事になりました。

当時、競合する製薬会社が欧米諸国への展開を進めていた中、大塚製薬の海外進出は1973年にタイで始まり、翌1974年には、合弁会社PT.OTSUKA INDONESIAをインドネシアに設立。
輸液の製造販売事業が、大塚製薬のインドネシア進出の始まりです。

その後、1989年にポカリスエットの販売が開始され、1997年にはポカリスエットを主力商品とする合弁会社が設立されました。

2-2.主な課題と解決手法・成功した理由

大塚製薬がインドネシア進出に成功した理由としては、主に以下の3つが挙げられます。

  • 段階を踏んで事業を拡大
  • 日本とは異なる販売戦略
  • 積極的なSNSマーケティング

それぞれについて解説します。

2-2-1. 段階を経て事業を拡大

進出当初にいきなり製造工場を設立するのではなく、販売とマーケティングに特化した会社を立ち上げて段階的に事業を拡大していったのが大塚製薬の特徴です。

自社工場が操業開始するまでは委託生産を行っており、マーケットボリュームができてきた設立から7年後の2004年に、最初のポカリスエット工場であるスカブミ工場を、2010年には2番目の工場であるクジャヤン工場を稼働させました。

2-2-2. 日本とは異なる販売戦略

ポカリスエットの「のどの渇きを癒すスポーツ飲料」という日本でのコンセプトは販売開始当初、スポーツが盛んではない熱帯のインドネシアで受け入れられず、合弁会社のパートナーに3年で合併解消されるほどの販売不振に陥りました。

そこで、現地特有の風土や文化に基づいた潜在的なニーズに応えるため、ポカリスエットの訴求ポイントを「脱水症状を癒す飲料」として再定義し、次のような戦略を展開しました。

  • 熱中症やデング熱など熱帯特有の病気による脱水症状を緩和する飲料
  • ラマダン中、断食が終わる日没後に最初に摂る飲料

「脱水時の水分補給と栄養補給に有効である」というPR活動を行った結果、次第に現地で受け入れられるように。今では国民的なドリンクにまで成長しています。

大塚製薬はポカリスエットの機能やデザインを一切変更せず「意味付けを変える」ことで、現地に適応させることに成功させました。

2-2-3.積極的なSNSマーケティング

ポカリスエットがインドネシアで広く受け入れられた後も、SNSを積極的に使用してPR活動を行っています。
日本からインドネシアに進出した他の企業を見ても、SNSのフォロワー数が桁違いに多いです。

<ポカリスエットのSNSフォロワー数/2024年4月時点>
SNS フォロワー数 アドレス
Instagram 14.1万人 https://www.instagram.com/pocariid/?hl=id
Facebook 59.9万人 https://www.facebook.com/pocariID/?locale=id_ID
X(旧Twitter) 10.1万人 https://twitter.com/pocariID
YouTube 12.7万人 https://www.youtube.com/channel/UCEkzid5-AkUFES4SlWfXEtg

なかでも、ポカリスエットのCMはYouTubeで1,500万回以上の再生回数を記録し、大変な人気を集めています。

引用:https://www.youtube.com/watch?v=DCfk7tc_KqE

ポカリスエットは2019年から「Bintang SMA」という高校生が参加するタレント発掘イベントを毎年開催しており、「Bintang SMA」をテーマにしたポカリスエットのCMは、毎年多くの再生回数を記録しています。

2-3.成果

大塚製薬は「デング熱」や「ラマダン」など現地の文化的背景、感覚、ライフスタイルを徹底的に研究し、地域特有のマーケティング戦略を展開しました。
結果、ポカリスエットは販売開始時の年間3万缶から現在では年間6億本以上の販売へと飛躍的に伸ばし、大きな成功を収めました。

また、ポカリスエットを通じて構築した流通網を利用し、「SOYJOY」の市場拡大にもつなげています。

3.ユニ・チャームの成功事例 「乳児用の紙オムツは市場シェア首位の42%」

引用:https://www.unicharm.co.id/id/home.html

「的確な海外戦略」と「現地事情に即した商品展開」をもとに、ユニ・チャームはインドネシアの衛生用品市場で大きなシェアを獲得しました。
インドネシアで大きな成功を収めたユニ・チャームの進出事例を紹介します。

<ユニ・チャームの成功事例>
項目 内容
成果 「ベビー用紙おむつ」「生理用品」「大人用排泄ケア用品」のインドネシア市場でシェアNo.1
現地法人名 PT. Unicharm Indonesia
業種・事業内容 衛生用品メーカー〈BtoBtoCタイプ〉
紙おむつや生理用品等の衛生製品の製造と販売
現地公式サイト https://www.unicharm.co.id/id/home.html
主要な出来事
  • 1997年、合弁会社設立
  • 2019年、インドネシア証券取引所に上場
進出の目的・背景
  • 国内市場の成熟化を予測し、新興国への市場開拓
主な課題
  • 発展途上国のため、日本市場での成功体験が通用しない
解決手法・
成功した理由
  • 新規進出する海外市場は「黎明期」か「成長前期」
  • 徹底したマーケティングによる現地事情に即した商品展開
  • 決裁権を持つ執行役員クラスの優秀な人材の派遣

3-1.インドネシア進出の目的・背景

ユニ・チャームの海外進出は国内市場の成長鈍化を見据え、1984年に台湾の現地法人設立から始まりました。
中国や韓国、東南アジアへと進出し、その後はアフリカや南米にも進出を拡大。
新興国を中心に海外展開を加速させた結果、ユニ・チャームは80以上の国や地域に事業を広げ、海外売上の比率を2001年の約10%から2023年には65.8%まで増加しました。

インドネシアの海外進出で特筆すべきは、自社での生産と販売による「直接的な市場参入」と「技術提供のみによる間接的な参入」を使い分けている点です。
インドネシアでは1980年半ばから1996年まではインドネシア企業への技術提供のみの間接的な参入を行い、1997年に大手財閥グループSinar Masと提携して合弁会社「PT.Unicharm Indonesia」を設立し、「直接的な市場参入」に切り替えました。

3-2.主な課題と解決手法・成功した理由

ユニ・チャームがインドネシア進出に成功した理由としては、以下の3つが挙げられます。

  • 新規進出する海外市場は「黎明期」か「成長前期」
  • 現地事情に即した的確な商品展開
  • 執行役員クラスの優秀な人材を派遣

それぞれについて解説します。

3-2-1.新規進出する海外市場は「黎明期」か「成長前期」

ユニ・チャームは市場の成長ステージを「黎明期」「成長期」「普及期」「成熟期」に分け、各段階に応じた戦略を明確化しています。

ユニ・チャームの統計では1人当たりGDPが3,000ドルを超えるとベビー用紙おむつや生理用品の普及が一気に進むため、進出する海外市場は「黎明期」または「成長前期」に絞っています。
進出後は市場の成長具合に合わせて、適切な商品をタイムリーに投入することで「商品の普及率の拡大」と「収益の最大化」を図るのがユニ・チャームの戦略です。
そのため、新興国へのビジネス展開を得意としています。

3-2-2.現地事情に即した的確な商品展開

インドネシアの紙おむつ市場では、P&Gやキンバリー・クラークなどの競合が存在する中、ユニ・チャームは徹底したマーケティング戦略と現地事情に合わせた商品開発を展開しました。

その戦略として、

  • スーパーマーケットではなく、「ワルン」と呼ばれる小規模な雑貨店での販売
  • 「ワルン」で買い物をする庶民が購入可能な、最低限の機能を備えた低価格の紙おむつを開発
  • 現地の習慣に合わせ、1枚売りのおむつを提供

といったアプローチを行った結果、ユニ・チャームは「庶民の味方」として広く受け入れられ、インドネシア市場において大きなシェアを拡大していきました。

日本での成功をそのまま導入するのではなく、インドネシアの現地事情を深く理解して商品改良を行った点が成功の鍵です。

3-2-3.執行役員クラスの優秀な人材を派遣

成功の要因の一つとして、執行役員クラスの優秀な人材を現地経営のリーダーとして派遣し、現地でのコミュニケーションと市場開拓を担わせた点が挙げられます。

執行役員クラス人材を投入したことで、本社からの細かい管理や煩雑な報告・連絡業務を最小限に抑えることでき、さらに現地で決裁できる権限を持つ人材を送り出すことでスピード感をもった対応が可能になりました。

優秀な人材を日本に留めたいという考えもある中で、海外進出の初期段階では決裁権を持つ人材を派遣することは有効な手段です。

3-3.成果

ユニ・チャームが1997年にインドネシア市場に参入した当時、インドネシアの一人当たりGDPは1,308ドルでした。
しかし、2010年には3,000ドルを超え、2023年には5,000ドルを突破しました。

インドネシアの経済成長に合わせて、ユニ・チャームは低価格帯の商品からスタンダード、プレミアム商品に至るまで幅広い商品展開を行っています。

その結果、インドネシアにおける「ベビー用紙おむつ」「生理用品」「大人用排泄ケア用品」の市場で、いずれもシェアNo.1を獲得しています。

参考:ユニ・チャームグループ 統合レポート2023


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4.ピジョンの成功事例 「哺乳器の市場シェア6割を獲得」

引用:https://www.pigeon.co.id/

知名度や実績が乏しい状態からスタートして50年。
「0〜18か月の乳幼児向けの商品に特化」した戦略を長年突き通した結果、中国・ベトナムといったアジア各国における人口の爆発的増加とうまくマッチングし、アジア圏で哺乳器のトップシェアブランドになるほどの成功をおさめました。

<ピジョンの成功事例>
項目 内容
成果 インドネシアで哺乳器のシェアが6割。
シンガポール・タイ・ベトナムでもトップシェアを獲得
現地法人名 PT.Pigeon Indonesia
業種・事業内容 育児用品メーカー〈BtoCタイプ〉
育児用品の製造・販売
現地公式サイト https://www.pigeon.co.id/
主要な出来事
  • 1994年、合弁会社PT. Modern Pigeon Indonesia設立
  • 2017年、PT PIGEON INDONESIAを連結子会社化
進出の目的・背景
  • 日本の少子化が進む中、人口増が続くアジアでの事業展開が必須となり、現地生産に切り替えて本格的に事業展開した
主な課題
  • これまで代理店を通じて展開したが、売り上げが伸びなかった
  • 知名度や実績が乏しい
解決手法・
成功した理由
  • ビジョン商品は、もともと海外展開しやすかった
  • 病院へのアプローチ
  • 現地ニーズに合わせたローカライズ化

4-1.インドネシア進出の目的・背景

ピジョンの海外進出は早く、1966年には「日本から哺乳器を輸出して、現地の代理店を通じて販売してもらう」形態で開始しました。
しかし、代理店を通じた海外進出は苦戦を強いられ、売り上げが伸び悩む状況が長く続いていました。

その後、日本の少子化が進む中、人口増が続くアジアでの事業展開を行う必然性が高まり、伸び悩んだ状況を打開してシェアを上げるため、東南アジアで現地生産する事を決断。
1994年にインドネシア、1996年にはタイに工場を建設し、本格的な市場参入が行われました。

4-2.主な課題と解決手法・成功した理由

ピジョンがインドネシア進出に成功した理由としては、以下の3つが挙げられます。

  • ビジョン商品は、もともと海外展開しやすかった
  • 病院へ重点的にアプローチする
  • 現地ニーズに合わせたローカライズ化

それぞれについて解説します。

4-2-1. もともと海外展開しやすかったビジョン商品

ピジョンの全商品のターゲットは「0〜18か月の乳幼児」と絞り込んでいるため、海外展開に適した特性を持っていました。

その特性とは「ローカライズにかかるコストが低い」事です。

生後18か月を超えると、地域の文化や習慣の影響を強く受け始めるので育児用品のニーズに差異が生じ、それに対応するための「ローカライズ化」により多くの時間と労力がかかってきます。
進出する国ごとにコストがかかるので、結果、広く海外展開する際には莫大なコストと労力がかかる事になります。

一方で生後0〜18か月であれば、世界中どの地域でも基本的なニーズがほぼ同じなため、地域特性に応じたわずかな調整だけでグローバル展開することが比較的容易でした。

4-2-2. 病院へ重点的にアプローチする

知名度や実績が乏しい中、ピジョンが力を注いだのは病院や産院への普及活動でした。

お母さんたちが哺乳器の購入を検討する際は、世界共通で「病院の与える影響」が大きいものです。
従って、ピジョン製品が病院で使用されていると自ずと信頼性が高まるうえ、医師や看護師からの推薦も期待できます。

加えて、病院や産院との信頼関係を築くことで医師や看護師から現地のニーズを把握でき、ひいては赤ちゃんに寄り添った製品開発も行えました。

4-2-3.現地ニーズに合わせたローカライズ化

ベースとなる商品の機能は守りつつも、現地ニーズに合わせて製品をローカライズしました。

例えば一口に海外といっても国によって所得差があり、中国では価格の高い商品が好まれる傾向にありますが、インドネシアでは安価な商品のニーズが高いです。
そのため、インドネシアの人口の多数を占めるミドル層に合った価格帯の哺乳器を製造して販売したことで、インドネシア全域で着実にシェアを広げていきました。

4-3.成果

結果、インドネシアでの哺乳器シェアは60%以上を占め、圧倒的な知名度とブランド力を誇っています。

また、インドネシア以外においても、シンガポール、タイ、ベトナムでピジョンは哺乳器のトップシェアを獲得しており、ピジョン全体の売上における海外市場の比率は60%以上を超えました。

今後も年間出生数が約500万人とされるインドネシアを重点市場として位置付け、さらなる事業拡大を目指しています。

参考: ピジョン|2023年12月期(67期)決算説明資料
参考:
JETRO|巨大市場インドネシアに挑む日本企業(1)

5.丸亀製麺の成功事例 「進出後10年で100店舗達成」

引用:https://www.marugameudon.co.id/

丸亀製麺のインドネシア進出は2010年代と決して早いものではなく、すでにローカルから外資まで外食市場は形成されていました。
後発ながら進出からわずか10年で100店舗を達成するなど、インドネシア市場で大きな成功を収めた丸亀製麺の進出事例を紹介します。

<丸亀製麺の成功事例>
項目 内容
成果 2013年に1号店を出店後、10年後の2023年に100店舗達成
現地法人名 PT.Sriboga Marugame Indonesia
業種・事業内容 飲食業〈BtoCタイプ〉
丸亀製麺の経営
現地公式サイト https://www.marugameudon.co.id/
主要な出来事
  • 2012年、現地のパートナー企業との合弁会社を設立
  • 2013年、ジャカルタに1号店を出店
  • 2023年、ジャカルタに100号店を出店
進出の目的・背景
  • インドネシアは「世界第4位の人口」を有し、かつ「外食を好む国民性」を特徴としており、巨大な外食市場が存在している
主な課題
  • 原材料を安定的に確保すること
  • 宗教的な制約のある食材は使えない
解決手法・
成功した理由
  • インドネシア国内に外食チェーンを展開して豊富なノウハウを持つ現地パートナーの存在
  • 現地の食生活に合うメニューのローカライズ化

5-1.インドネシア進出の目的・背景

丸亀製麺は2011年にハワイへの出店を皮切りに、本格的な海外進出を進めました。
その後も韓国、中国、タイなどへの出店を加速させ、国内市場のみに留まるリスクを回避するべく、より大きな市場への拡大を図っています。

丸亀製麺の海外進出の強みは、低い進出コストにあります。

多くのよくある飲食業の様に、セントラルキッチンで料理や食材を加工して店舗に配送するスタイルを取る場合は、インドネシアのように運送費が高い地域において大きな初期投資とリスクを伴います。

一方で、丸亀製麺は店内で直接うどんを製造しているため大規模な工場建設が不要なので、より低リスクでの海外展開が可能です。
したがって、必要に応じた迅速な撤退も行えるので大胆な海外戦略を実行できます。

5-2.主な課題と解決手法・成功した理由

丸亀製麺がインドネシア進出に成功した理由としては、以下の2つが挙げられます。

  • インドネシア国内に外食チェーンを展開する、豊富なノウハウを持つ現地パートナーの存在
  • 現地の食生活に合うメニューのローカライズ化

それぞれについて解説します。

5-2-1. 豊富なノウハウを持つ現地パートナー「ローカルバディ」

丸亀製麺は、海外進出において現地でのパートナー企業選びを非常に重要視しています。

この現地パートナー企業を「ローカルバディ」と呼び、単なるビジネスパートナーではなく、理念やビジョンを共有するくらいの深い関係を目指しています。

世界各地にローカルバディは存在し、インドネシアのローカルバディは現地の大手製粉会社「Sriboga Raturaya」です。
Sriboga Raturayaと提携することで、安定的な小麦粉の供給を確保が期待できます。
加えて、Sriboga Raturayaはインドネシア国内でピザハットのフランチャイズを200店舗運営する企業を有しており、その運営ノウハウをスムーズな多店舗展開に活用できる点も期待できました。

5-2-2.現地の食生活に合うメニューのローカライズ化

丸亀製麺はインドネシアの食文化に合わせて、基本的なメニューを維持しつつも徹底的にローカライズ化しました。

日本では見られない「ビーフカルボナーラうどん」、「チキンカツカレーライス」、「すきやき丼」といった独自メニューを導入し、現地の好みに合わせた多様な選択肢を提供しています。

さらに、定番商品の味付けも現地の好みに合わせて日本よりもやや軟らかく細い麺に調整し、辛いものを好むインドネシア人のためにきざみ唐辛子も用意しました。

また、ハラルフードの提供にも力を入れており、豚由来の調味料を使用せず各店舗で鶏ガラスープを使うなど様々な工夫を施し、2015年にはハラール認定レストラン事業者として認められています。

上記のように、現地の人々が好むカスタマイズに徹底して取り組んでいるのが特徴です。

5-3.成果

2013年に1号店を出店し、10年後の2023年には100店鋪の出店を達成しました。
しかもジャワ島だけではなく、バリ島やスマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島などにも出店しているのが特徴的です。

丸亀製麺は現在8カ国に257店舗を構えていますが、そのうち4割弱がインドネシアにあることから、丸亀製麺におけるインドネシアの重要性と大きな成果がうかがえます(2023年12月現在)。


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